スーパーとかで、牛乳パックやお肉とかのトレイと一緒に回収されているペットボトルキャップ。
別名「エコキャップ」といって、発展途上国の子ども達へのワクチンに変身するとのことですが、あれ?なんでワクチンになるの?と疑問が浮かびます。
しかも、ただの偽善?とか、ペットボトルキャップをワクチンに変えるよりもっと効率的な方法があるなど、あまりよくない噂も…。
そこで、ペットボトルのキャップがワクチンに変わる理由と、噂の真相について解説します。
ペットボトルキャップがワクチンに交換できるのはなぜ?
ただのプラスチックのキャップがワクチンになる!?というと謎ですが…、その仕組を簡単に言うと、キャップをリサイクル業者に売って得たお金で、ワクチンを寄付しているんです。
下記、もう少し詳しく解説しますね。回収したペットボトルキャップがどんな過程を経て、子どもたちへワクチンが接種されるのかの一連の流れです。
- キャップを回収ボックスなどで集めて業者に渡す
- 回収業者によって、リサイクル資源として樹脂メーカーに売却される
- 売却利益が「認定NPO法人 世界のこどもにワクチンを(JVC)」や「国境なき医師団」などに寄付される
- ユニセフと連携して、ワクチン工場へワクチンを発注
- 製造されたワクチンが冷凍のままで支援国へ運搬される
- 支援国で必要な子どもにワクチン接種を行う
回収は、イオン株式会社や松坂屋などのスーパーやデパート、各種リサイクル会社や環境保護団体が無料で回収したり、個人で集めた分をその業者が窓口となる会社に持ち込んだり郵送して行います。
回収を行っている業者一覧は以下のURLからご確認くださいね。

ここが窓口になって、主に樹脂メーカーに送られます。樹脂メーカーで分類したり熱を加えたりして溶かし、プラスチックの原材料になるのです。
実際にワクチンを作るのには、どれくらいのキャップが必要になるのかをそれぞれ調べてみました。想像以上にたくさん必要でびっくりです!
- 小児マヒ(ポリオ)ワクチン:一人分約20円 キャップ約500個
- 三種混合ワクチン:一人分約114円 キャップ約2860個
- はしかワクチン:一人分約95円 キャップ約2500個
- BCG(結核):一人分約7円 キャップ約180個
この4種類をたった一人分だけ用意するのに、ざっと6000個以上も必要になってしまう…これに百日咳のワクチンも加わるとさらに+一人分約9円、キャップだと230個必要とのこと。
途方もない数が必要になるんですね。そりゃあ、あんなに大きな箱がキャップ用としてリサイクルコーナーにあるのもうなずけます。
つづいては、そうは言っても本当はワクチンに変えるなんてウソなんじゃないの?という噂について調べてみましたので、私の意見もまじえて解説します。
ペットボトルキャップがワクチンになるのは嘘だという噂は本当?
キャップがワクチンになるのは嘘なんじゃない?という噂もネット上には流れているんですよね。
そもそもなぜそんな風に疑われているのかというと、以下の2つの意見から。
- キャップを集めるよりも普通に寄付した方が絶対安い
- ワクチンにするまでの手間がかかりすぎる
実際に、先ほど説明したような過程を経て、ペットボトルキャップがワクチンになるというのは本当のことです。
しかし、この噂が出るのにはまぁ考えてみたらそりゃそうだよねって事情がありましたので、それぞれ詳しくお話していきます。
1.ペットボトルキャップの売却価格が恐ろしく安い
回収したキャップを売ってそれでワクチンを買うようなシステムですが、キャップを約25個集めてようやく1円!たったの1円かぁ・・・となってしまう効率の悪さ。
25個ってことは、1日1本ペットボトル飲料買うとなったら25日間かかるということですよね。ただ、必要で買っているペットボトル飲料のキャップは、そのまま捨てればただのゴミなので、それを寄付したらいいよねっていうのはその通りですが。
2.輸送料金が高い
先ほどお伝えしたように、ペットボトルのキャップの単価はすさまじく安いので、いくばくかにするためには沢山集めなくてはなりません。
そして、さらにこれを輸送するのにかなりの金額がかかってしまうということで問題になっているんですね。
たとえば、イオングループなどで行っているエコキャップ回収の場合、独自の輸送ルートがあるので余分なお金はかかりません。
しかし、それ以外の、たとえば小学校などで集めた場合には輸送は一般業者を利用することになりますよね。この時の輸送費が、ガソリン代値上がりがひどい昨今はかなり高いのです。
たとえば、佐川急便でエコキャップ運動用のダンボール箱を使うと、箱は1枚158円で、送れるキャップは6キロ(2400個)。
この場合、輸送費は450円弱で済むのですが、6キロのキャップの純利益は60円。そう考えると、なんだかがっくりきちゃいますよね。
ただ、これにも解決策を打ち出しているところがいくつか出てきています。
NPO法人エコキャップ協会というところで、専用袋を販売していて、45リットルの袋1枚57円を利用すれば輸送料金は432円でできます。また、関東方面だけですが無料で回収してくれるようです。
3.リサイクルまでの人件費もかかる
ペットボトルキャップって、意外と汚れがついていることが多いですよね。キャンペーンのシールなんかもうまく剥がせないと汚れちゃいますし。
そんなキャップ自体も、材質は同じように見えますが、そうではない場合もあるとか。それで、キャップの分類と洗浄などを行う人員が必要で、障害者福祉施設でこれを担っていることも多いようです。
ただ、障害者福祉も最近では就労支援に力を入れているので、そういったところに経費がかかってしまうということや、ワクチン発注窓口になっている法人の人件費にも充てられていることが発覚したこともあって、世間的にはがっくりきたという事実があるのです。
この報道が出たのは2017年のこと。これが今はどうなっているのかは、調べても分からなかったのですが、現在は違うところから財源を充てていられたらいいですよね。
4.キャップを集める箱もお金がかかる
これまた回収場所によりますが、同じ箱で統一しているところもあれば、自前で頑張ったんだねと思われるような手作り感のある箱を使っているところもあるエコキャップ収集所。
イオングループや各デパートなどは、さすがの企業力で自分で素敵な箱を作って設置していますが、そうでない場合は、NPO法人エコキャップ協会などで販売しています。45リットルのものが6000円と、なかなかのお値段ですね。
ということで、何をするにもコストがかかる、ということが気になる人がネット上では「それなら寄付を普通にしたらよくね?」と主張していて、どこからか「キャップがワクチンになるのは嘘じゃね?」という風になって流れているんですね。
まぁ、そういう主張も正しい部分もありますし、でもやっぱりワクチンが必要な人に不要なものを売ることで与えられるなら善、という考え方もありますからね。
ウソではないにしてもちょっと複雑な事情が見え隠れするということは事実ですかね。
ペットボトルキャップがワクチンになるのはなぜ?まとめ
以前は私もまったく知りませんでしたが、どうせ捨ててしまうペットボトルのキャップをリサイクルしてお金を得る。そして、非営利団体を通じてワクチンが必要だけど買えない国の子供達に届けられるという仕組みでした。
すばらしい取り組みですが、一方でかなり多くのコストがかかるという現実があり、「それなら普通に寄付した方がいいんじゃない?」というのもごもっとも。
しかし、いろんなコストはかかるけれど、その影には障害者の方の働く場所があったり、色々な人の気持ちが隠れていたりします。
途方もないことのように思えるエコキャップ運動ですが、ただゴミにするのではなくて誰かの命を救うことができるなら、気軽に誰でも参加できる社会貢献だな、という印象を私は持ちました。
家でペットボトル捨てる時にとりあえず袋に入れておいて、買い出しの時に回収ボックスに入れるだけという手軽さも素敵。私は今後も気の向いた時に回収ボックスへ持っていきますよ~。